とみさわクリニック

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心療内科/精神科

日本芸術療法学会の会員の方へ

日本芸術療法学会会員の方々へ
  〜オンラインでのスーパービジョン、講義のお知らせ〜
(2022.12.30掲載)

日本芸術療法学会会員の方々へ

さる2022年11月5日(土)、11月6日(日)の両日、第53回日本芸術療法学会(学術総会)が開催され、私も参加しました。

2日間とも最後までご参加の先生方は既にご存じかと思いますが、私は1日目のシンポジウムのシンポジストと2日目のシンポジウムの司会をさせていただきました。
2日目のシンポジウムは「芸術療法と教育制度」というテーマで芸術療法を学びたいという人達に学会がどう答えていけばいいのか、ということを問うたシンポジウムであると私は理解しました。

また2日目の午前中にはイギリスとドイツでそれぞれ芸術療法の研修と実践を行っている学会員の方の症例経過の発表が2題ありました。どちらの方もそれぞれ当地での資格を取得、あるいは取得予定で今後日本で芸術療法を用いた心理療法の実践を行おうという方でした。

さらに2日目の午前中の特別講演ではアメリカでアートセラピストの資格を取り、現在は日本の病院で活動している先生のお話がありました。

それらの中で語られていたのは、欧米を中心とする諸外国では「芸術療法」はとてもポピュラーで、アメリカやイギリスでは数千人のアートセラピストが医療機関や介護施設、刑務所やコミュニティセンターで働き、利用者の人達が芸術療法的なケアを受けることは珍しくないこと、またドイツでは精神科・心療内科で治療を受けている患者さんの70%近くが週1回以上アートセラピーを体験する機会を得ていること、などでした。

日本の現状では医療関係者や教育、福祉など対人援助の領域の中でも芸術療法の認知度は低く、また芸術療法を用いてこのような対人援助を行いたいと思う人達の教育や研修を行うハード的な場所や機会も、またソフト的な教育・研修システムも整備されていません。

だからこそ芸術療法を学び、臨床に生かしたいという志(こころざし)を持つ人達は、日本で十分に学べないとなると、海外のシステムが確立されたところへ学びに行くのだと思います。
このような機会を得て、研鑽を積める人達は幸運でしょう。しかし様々な理由でこのような海外での研修を容易には行えない人達もいるはずです。

私自身、精神科医になってほぼ同時に芸術療法という精神科治療の一領域を知り、それを学び、実践する機会にも恵まれ、本学会の役員として学会活動を今日までさせていただきました。

しかし2022年11月の第53回学術大会に参加し、上記の様な芸術療法を学びたいと真摯に取り組み、研鑽、努力されている会員の方々の発表や意見を伺い、私自身はとても「申し訳ない」気持ちになりました。

というのも、このような思いで芸術療法を学びたいと、この学会に参加されている後進の方々に私を含めた学会の役員達は本当に答えてきたのか、と思ったからです。


私たちの「日本芸術療法学会」は、大会回数が示すとおり50年超の歴史を持つ、日本では芸術療法のパイオニア的な存在です。ほぼ毎年、年1回の学術大会と芸術療法研修セミナーを開催し、学会が認定する芸術療法士を毎年輩出しています。

しかし、そのような活動によって研鑽を積み、これからも実践を行おうと志す人達に、実際にそのような場が提供されているでしょうか?

今でも学会の事務局には会員の方から「芸術療法の実践が出来る場を教えて欲しい」「芸術療法の治療経過をスーパーバイズしてもらえる先生を紹介して欲しい」と問い合わせがあります。

現実にそのようなご紹介を個別にはしていないので「紹介はしていない」とお答えしています。

しかし「やっていない」「出来ない」という前に私たち(役員)は、指導的な立場の会員や医療機関などに「スーパービジョン出来ますか」「芸術療法の研修を受け入れ可能ですか」と聞いたことがあったでしょうか。出来る人や機関は申し出て欲しいと募ったことがあったでしょうか。

もちろん、学会としてそのように計画してやろう、ということになっていないのでしていません。

それが私には「申し訳ない」のです。


第53回学術大会2日目シンポジウムの司会をしていて、今さらながらそのことを痛感しましたので、私はそこにおられた出席者の方々に「私としては申し訳ない気持ちになった。私たちも出来ない、やっていないという前に何か出来ることがあったのではないか。これからは私は自分の出来ることをやっていく。ここにいるみんなで出来ることをやろう」と申し上げました。

私個人が出来ることはもちろん限られています。しかしここで、この文章をお示ししているのもその一環です。
私の発言に対しても、その場で望外にご賛同をいただき胸が熱くなりました。


これから日本国内でも芸術療法を学び、臨床の研修を行おうとする臨床家、また芸術療法が助けになると思われるユーザーの方々ー精神科の患者さんや心理療法を受けるクライエントに限らず、学校での特別な支援や高齢者施設等で支援を必要とする方々ー、さらには芸術や教育の分野などから芸術療法の領域に興味を持たれ学会に入ってこられた方々などに、芸術療法の意義や実践方法、精神医学や臨床心理学の知識などを提供できるシステムを作っていきたいと思っています。

また芸術領域の専門家の方々に、私たち臨床家に対して感性化教育のようなことー臨床家自身が芸術表現に興味を持って表現できるようになることなどーをしていただいたり、ユーザーの方々に私たちはこのような活動(臨床、非臨床にかかわらず)をしているとお知らせしたりする、ということも芸術療法の発展のために必要と思いますので、発信していきたいと思っています。


私自身は学会の中では芸術療法研修セミナーを毎年行っている「研修委員会」という会のメンバーですので、皆さまの研修に関連することをやっていきたいと思っていますが、上記の様なことは全て、私が今回のことを通じて感じただけの、一会員としての意見ですので、この意見を学会の中で申し上げ、ご賛同を得るつもりですが、現時点では何も学会として示された方針ということではありません。

ただし、学会の役員や会員の皆さまにご賛同をいただくまで何もしないということではありませんし、今すぐにでも私個人が出来ることで、上記の様な目的にかなうものがあればその準備を始めていこうと思っています。私が現時点で考えていることは以下のようなことです。

  1. 臨床家で芸術療法を用いた臨床をされている方の症例に関してオンラインでスーパーバイズを行う。またスーパーバイズが出来る先生を紹介する。
     医療機関や心理療法を行う相談室などで芸術療法の臨床的研修が行える機関を募り、研修を希望する会員に紹介する。

  2. 臨床家の方や臨床家ではない会員が健康な人達を対象に、健康増進や表現する喜びなどを提供するアート活動を行うことを援助する。そのために一般的な知識として疾病と健康、精神医学や心理学、治療のための理論などを講義などを通じて解説する(直接臨床に携わらない方々でもこのような医学的、治療的知識を持つことはアート活動を展開していく上で役に立つと思われるからである)

  3. 臨床家とそうでない本学会会員の橋渡しとなるように、会員同士が芸術療法やアート活動に関して相互に連携できる場や機会を提供する。具体的にはアート活動をしていてメンタル不調をきたした人がいれば、本学会の精神科医や心理士など医療的・心理的サポートが出来る人を紹介したり、逆に治療の枠組み以外でアート活動を行うことを希望する人や、そのような活動がその人にとって好ましいと思われる人たちを、アート活動家に紹介する。
    このような活動をしていることをユーザーや対人援助職の人達などの本学会以外の人達に周知出来るよう活動を行う。

  4. 精神疾患や心理的な問題に対する治療で、薬物治療ではない、心理的治療や相談、援助などの治療を行う他の学会と協力、提携、連携して芸術療法の価値や意義をユーザーや治療の専門家、対人援助職の人達に広め、芸術療法が日本社会においてより一層定着するように活動を行う。
    また精神医学領域で最も大きな学会に働きかけて芸術療法の意義と必要性を示し、精神医学の分野においても芸術療法の有用性を広め、精神科診療の現場でも芸術療法が実践されるよう活動する。

以上のようなことを考えています。


すぐに取りかかれることとしては、オンラインによるスーパービジョンや精神医学・心理療法の講義などですが、具体的にこのようなサポートをご希望の日本芸術療法学会会員の方がおられましたら、私のクリニックホームページにあります「精神科医によるオンライン相談サービス『木蔭の相談室』」の「ご相談方法」の欄にある「お申し込みフォーム」からお申し込みください。
(フォームの中に「ご相談内容」の欄がありますので「その他」を選び「芸術療法学会会員向けの相談」と書いて送信してください。私の方からご返信いたします)


お申し込みをいただきましたらスーパービジョンや講義を実際に行う日時や料金などをメールにてご相談申し上げます。

このサービスは「日本芸術療法学会の会員」に限らせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

とみさわクリニック 富澤 治
 (日本芸術療法学会 理事)

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