とみさわクリニック

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心療内科/内科/精神科

こころの病気について


摂食障害


摂食障害には大きく分けるといわゆる「拒食症」(神経性無食欲症)といわゆる「過食症」(神経性大食症)とがあります。


拒食症は単に「おなかが空かない」ということではなく、意識的に「食べない」「少なく食べる」「その結果体重や、体型をコントロールする」ということに価値を見いだすことによって、摂食を減らす状態を言います(ただし患者さんによっては、そのような状態が続いた結果、「食欲を感じない」という状態にもなります)。


このような「食べない」あるいは「食欲に克つ」ことの意味は、自分の食欲や身体をコントロールすることによって自分自身の存在価値を見い出し、他のものによっては自分の価値を確保できない、ということになりますが、摂食を制限することの意味は人によって様々で、簡単には一般化できません。


一方、過食症は多くの場合「拒食」の破綻、失敗として出現することが多く、やはり、単に「おなかが空いているから食べ過ぎてしまう」ということではなく、むしろ「おなかが空いていないのに食べ過ぎてしまう、それを我慢するとイライラしたりして我慢できなくなる」という状態です。過食は「癖」のように、やめようと思ってもなかなかやめられない状態になることが多いのですが、通常「癖」になるものはアルコール、薬物など、その人にとって「気持ちの良いもの」がほとんどです。


過食の場合は、本人はそのことが気持ちいいことではなく、一方ではやめようと思っている、やりたくないと思っているのに、もう一方ではやめられなくなる、ということで、問題は複雑です。


意識的には過食を止めようと思いつつも、無意識的にはそのような過食によって自分のバランスをやっと保っているということも珍しくありません。

 

摂食障害の診断と治療

1. 摂食障害の診断

(1)摂食障害とは?

摂食障害といった場合は、体重を減らし、痩せるということに価値を見出して意識的に食事を制限して痩せていく、またその結果普通に食べようと思っても食べられなくなる「神経性無食欲症」(いわゆる「拒食症」)と、このような拒食の反動として空腹でないのにコントロールを失って、とりつかれたように食べ過ぎてしまう、あるいは気分の変動から落ち込んだり、いらいらしたりするのを紛らわせるために、止まらない感じで食べ過ぎてしまう「神経性大食症」(いわゆる「過食症」)とがあります。


私(富澤)は精神科医になってから今までおおよそ2000例くらいの摂食障害の患者さんを診てきました。

 

(2)摂食障害の原因と症状

行動としては「拒食症」と「過食症」は逆のようにも思えますがその根底にはどちらの場合も「食事をコントロールして体重の数値を低く保ち、体型を痩せた状態で維持していなければ自分自身の価値を保てない」という心理があります。 私たちが今生きている文化の中で考えれば、特に若い女性であれば「食事をうまくコントロールして食べ、痩せていたい」と思うこと自体は自然なことだと思います。


ですからいわゆる「ダイエット(セラピー)をしたい、している、」ということだけで「摂食障害である」ということはありません。 しかし摂食障害と「普通のダイエット」との間にもしも質的な差があるとすれば、それはその人が「自分の存在価値は痩せた体型、少ない体重ということによってしか保たれない」と考えているかどうかが分かれ目になると思います。


誰でもうまく痩せたいとは思うかもしれませんが、「痩せている」ということにしか自分の価値がないのだとすれば、その人はそこに自分の全存在を賭けて、痩せ続けようとするでしょう。 そしてまた実際に痩せたとしても安心はできず、「もっと痩せていなくてはならない」と思い、心がそこ(痩せ続けねばならないこと)に縛られた状態となります。その結果拒食症の場合はどこまでも痩せ続けることを求め、身体的、精神的に様々な障害が生じます。


しかしその人にとっては痩せ続けることにしか自分の価値はないのですから、止める事はできません。結果的に拒食症の場合は生命の危険が生じることもあり、実際に亡くなる事もあるのですが、その人は決して「死のうとして」食べないわけではなく、むしろ反対に「自分の価値を保つ」すなわち「生きる意味のために」食べないのです。


一方このような価値観で痩せることを求め続け、その結果抑えに抑えた摂食行動がある時反転して爆発的に食べ過ぎてしまうことがあります。一般に「リバウンド」といわれる状態です。これは摂食を抑え、体重が減少した結果、それに対して身体が反応して代謝率(身体に入ってきた栄養をどれぐらいのスピードで燃やすかという割合)が下がり、精神的にも摂食を我慢し続けた反動で起きます。 このような意味で「拒食」の逆である「過食」は意識的にはその人自身が最も避けたい行動に他なりません。本当はうまくコントロールして食事を制限し、その結果痩せた体型を求めているのですから、その反対に食べ過ぎしまい、体重が増え、太ってしまえば、自分の価値はなくなってしまいます。自信をなくし、やる気を失って、落ち込んでしまいます。


ですから「過食」の場合は、その人が好きで食べているのではなく、「本当はしたくないこと(過食)が癖になっている」という状態になります。


またこのような意味合いでの「過食」と、必ずしも矛盾はしないのですが、気分の変動が先行し、落ち込んだり、いらいらしたり、という気分の不安定さから、いわゆる「やけ食い」のように過食してしまうこともあります。このような場合、自己否定的な感情、怒り、寂しさなどを紛らわすために過食してしまい、食べているその間だけは嫌のことを少し忘れるのですが、結局は後で後悔する、ということになります。   

 

(3)摂食障害はどうなったら治ったといえるのか

ではこのような「摂食障害」が「治る」というのはどういうことでしょうか? ひとつには当然これらの表に出ている「症状」がなくなる、ということがあります。 「拒食症」の場合は食事が摂れるようになり、栄養状態が改善して健康な状態になることです。そうなれば当然体重は増えます(元に戻るということですが)。


「過食症」の場合は止まらない感じで食べ過ぎてしまうということがなくなり、空腹が満たされれば食べることが止まり、適切に食べることができれば気分も安定し、結果的に体重も安定します。


つまり「拒食」も「過食」もその症状が治る、ということは「(その人の健康が維持できるような形で)普通に食べられる」ということになります。 しかし「摂食障害が治る」といった場合メンタルヘルスの観点からいえばもうひとつー症状が治るという以上にー重要なことがあります。


それは「拒食症」であれ「過食症」であれ「体重、体型をコントロールしていなければ、自分の価値はなくなってしまう」という心のあり方が変わる、ということです。症状が良くなったとしても、今の文化的背景の中で生きている以上「体重や体型が全く気にならない」ということはないかもしれません。


しかし、体重や体型を痩せて保つこと「だけが」自分の価値の全てではない、となった時初めて、摂食障害は本当に意味で「治った」と言えると思います。その為には自分の価値が体重や体型とは別のところになくてはなりません。その自分自身の存在価値がなければ、「拒食症」の人にとっては症状が治る(結果として体重が増える)ことは、自分自身の価値を失うことになってしまいます。


「過食症」の人にとっても食事をコントロールし、体型を痩せて保つことができない限りは自分自身の存在価値はいつまでも達成されない、ということになってしまいます。

 

(4)摂食障害の治療

ではこのような「摂食障害」を治療するとしたらどのようなことが、医療の中でできるでしょうか。それは大きく分けていえば(1)心理的な治療(2)薬物による治療(3)栄養相談の3つになります。また拒食症であまりにも身体状態が悪く、生命の危険がある時などは上記のような治療を入院で行う必要が生じます。

 

2. 摂食障害の治療

ではこのような「摂食障害」を治療するとしたらどのようなことが、医療の中でできるでしょうか。 それは大きく分けて言えば、

(1)心理的な治療

(2)薬物による治療

(3)栄養相談

の3つになります。


また、拒食症であまりにも身体状態が悪く、生命の危険がある時などは上記のような治療を入院で行う必要が生じます。

 

(1)とみさわクリニックの摂食障害に対する心理療法

① 認知行動療法的アプローチ

ある人がどのような場面で、どのようにものごとを受け止め、それに対してどのように考えた結果、どのような対処行動をしたか、というような点に焦点を当ててその人自身のものごとの受け止め方、考え方、行動の仕方の「パターン」を考えて、変えていく、より適切な行動パターンを築いていく治療です。


具体的なその人の1日の行動パターンを捉え直すことによって、自分ひとりでは気付かない自分自身の傾向を変えていきます。

 

② 精神分析的アプローチ

「拒食症」であれ「過食症」であれ「体重、体型をコントロールしていなければ、自分の価値はなくなってしまう」という心のあり方が変わらなければ、すなわち、体重や体型を痩せて保つこと「だけが」自分の価値の全てではない、とならなければ摂食障害は本当に意味で「治った」とはいえないと思います。

そのためにはその人自身の存在価値が、体重や体型とは別のところに確立されなければなりませんが、このような達成を成し得るのは精神分析的な心理療法です。ある人が自分自身の価値を真に実感できないのだとすれば、それは今まで生きてきた積み重ねの中で、そう感じるに至ったそれ相応の理由があるはずだ、と精神分析的な見地からは考えます。


今の自分がつくられた今までの様々なこと、またその人自身も容易には気が付くことの出来ない心の深い部分をカウンセラーと共に考えることによって、「本当の自分」に出会うこと。それが精神分析的な心理療法の目的になります。

 

(2)薬物による治療

薬物による治療という場合、それはもっぱら症状、特に過食衝動に対する効果を期待した薬物治療が主体となります。拒食症の場合、客観的には身体的、精神的に良くない状態が出てきてしまい、このままではいけないと患者さん本人が理解している場合でも、先に述べたような意味で「自分の価値は痩せ続けていないと保たれない」と感じているとしたら、体重が少しでも増えることは抵抗があったり、怖かったりします。


このような心理を変えてしまう、というような意味で有効だとされている薬はありません。

しかし過食の衝動に対しては、食欲を抑制するような効き方ではなく、過食衝動そのもののを軽くする、という意味で有効と認められている薬があります。


しかしそれらの薬は「その薬を飲めば全員過食をしなくなる」というものではなく、その薬がその人に合っていなくては効果が出ません。ある人にある薬が合っているかどうかは、薬を続けて飲んでみないと解らないのですが、本当に合った薬を飲んで、「効いている」という場合には、食事をする場面で、過食衝動が軽くなり、結果として過食の際食べる量や、過食をしてしまう回数などが少なくなります。


しかし続けて飲むためには副作用がなく、効果がなくてはいけませんから、その部分の評価は診察を受けて継続的な治療をする必要があります。

また副作用がなく、効果が出た場合でもーそうでなくては薬を飲む意味がないのですがー、極端に摂食量を減らしたりすると、どこかではリバウンドすることになります。

また過食衝動自体が軽くなったとしても、その根底にある「自分自身の存在価値」という課題が解決されていなければ、本当の意味で治ったとはいえないと思います。


ですからこのような治療とあわせて具体的にどのように食事をとるのか、という意味で栄養相談、心のあり方を根本的に変えるという意味でカウンセリングなどの治療をすることはより効果的となります。

 

(3)栄養相談

摂食障害には大きく分けて、いわゆる拒食症と過食症があります。 栄養相談でできることは、どちらのクライアントに対しても、 その方にとっての適正な体重になるように、その方に合った正しい 栄養情報を提示することです。


自分自身に必要な、正しい栄養情報を得ることにより、太ってしまうという不安感や、痩せないといった焦燥感が和らぎ、それらをきっかけとして、食べることや食物へのこだわりが軽減していくことをめざしています。

 

3. 書籍のご紹介

裏切りの身体-「摂食障害」という出口

裏切りの身体-
ー「摂食障害」という出口ー

 

富澤 治(著)
2011年8月 エム・シー・ミューズ

摂食障害の診断と治療についてより詳しく説明しています。

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